METHOD 02
中小企業向けブランディング
ビジョンの策定とロゴデザイン
2024.04.25
ブランドの根幹となるビジョン策定とブランディングコミュニケーションの核となるロゴデザイン。それらの制作には二通りの方法があると考えます。一つは「提案ーフィードバック型」そしてもう一つは「共創型」です。デザイン会社からの提案をベースにお客様企業の要望を踏まえて調整していく「提案ーフィードバック型」とは異なり、「共創型」のアプローチは私たちデザイン会社とお客様企業がまず一緒になって事業=ブランドを整理・理解し、共に事業の存在意義やブランドについて考えるところから始めます。一見、回り道に見える手法ですが、制作されたビジョンやロゴデザインに対するお客様企業の共感の度合い、社内へのブランドの浸透の効率などを鑑みると、まさに「急がば回れ」と言える有効なアプローチです。
ここでは、私たちの、ミッション/ビジョン/バリュー策定、ロゴデザイン、タグライン制作の代表的な「共創型」ワークフローをご紹介したいと思います。
ビジョン策定などのブランディングプロジェクトに必要な探索
ミッション/ビジョン/バリューやロゴデザインというブランディングの中心となるものの策定には、何より「価値探求」のフェーズが重要だと私たちは考えます。事業の存在意義、社会課題との接点、ブランドの価値、などのついての議論が何より欠かせません。デザイン表現のフェーズに入る前に、これらについて検討を深めることが、ブランディングプロジェクト成功の秘訣だと私たちは考えます。そのため、私たちの手がけるブランディングプロジェクトでは、前半をインタビューやワークショップを中心とした「価値探求」のフェーズに割いています。その手法はトップインタビュー(ブランドマネージャーインタビュー)とプロジェクトチームワークショップを中心としています。
トップインタビュー①
コアターゲットとベネフィットは何か?
トップもしくはブランドマネージャーにヒアリング・インタビューを実施します。お客様企業のターゲットや顧客は誰か? どのような価値を提供するのか? ブランディングのために必要不可欠な、事業モデル・事業哲学に関する考え方を、ビジネス理解を深めながらお伺いします。
代表的な構文は『自社は、(ターゲット・顧客)に対して、(ベネフィット)という価値を提供する会社です』となります。
トップインタビュー②
事業をブランドとしたとき、提供価値は何か?
ベネフィットを掘り下げてお伺いします。事業=ブランドの機能的な価値、情緒的な価値、社会的な価値についてお考えをお伺いします。
特に、ブランドが、関わる人々をどんな気持ちにさせるのか? どんな体験や感情を提供するのか? という情緒的価値。さらに、ブランドの存在意義に関わる社会的価値について詳しく伺います。
トップインタビュー③
事業をブランドとしたとき、ブランドを構成する要素を6つ挙げると何か?
事業=ブランドを構成する6つの要素を挙げます。キーワードとなるDNA、信念、特徴、強み、バックグラウンドは何か? 思いつくキーワードを幅広く出し、6つに集約していきます。
トップインタビュー④
ミッション/ビジョン/バリューの認識を確認する
次の構文で事業=ブランドを記述します。これはミッション/ビジョン/バリューのベースとなる構文です。いったんこの段階で仮のミッション/ビジョン/バリューを制作し検討の叩き台とします。
『自社は、(組織が担い続ける社会的使命)を通じて(組織が目指すべき理想の未来)という社会の実現を目指す。その根拠は(組織の特徴・強み・リソース)である。』
トップインタビュー⑤
ブランディングのタスクシート
インタビューを通じて明らかになった理想とタスクをまとめます。また、ここで現状のブランディングの課題を検討します。理想の姿を実現するためにどのような活動が必要で、障壁となる問題は何か? ブランディングプロジェクトのスコープを明確化するためにもここで洗い出しを行います。
ブランディングプロジェクトチームによるワークショップ①
バックキャスティングモデルで事業を整理する。
バックキャスティングモデル(ロジックモデル)はチームで行うビジョン策定のコアとなるワークショップです。作成の前に、事前の情報整理を行います。お客様企業の事業が、最終的に「誰にどうなって貰うため」に活動を行っているのか、企業や商品・サービスではなく「受益者」を主語にして記述することで、理想の状態から逆算してお客様企業の活動を定義することができます。
バックキャスティングモデル(ロジックモデル)では、「誰がどういう状態になることを理想として事業活動しているのか」を視覚的に分解して分析します。「アウトカム」からバックキャスティング(逆算)して、事業の成果、事業活動、事業リソースをモデル化します。「アウトカム」にはあくまでもお客様やユーザーなど「受益者」を主語にした、「受益者の状態」を記述することがポイントです。
ブランディングプロジェクトチームによるワークショップ②
バックキャスティングモデルを踏まえ、ブランドの自己分析をする。
バックキャスティングモデル(ロジックモデル)を踏まえ、トップインタビューと同内容について、ディスカッションを行います。また、トップの考えとチームの考えの摺り合わせを行い、ブランディングプロジェクトの方向性を確定させます。
ブランディングプロジェクトチームによるワークショップ③
ブランディングのタスクシート
トップインタビューを含めて、インタビュー・ワークショップを通じて明らかになった理想とタスクをまとめます。また、ここで現状のブランディングの課題を検討します。理想の姿を実現するためにどのような活動が必要で、障壁となる問題は何か? ブランディングプロジェクトのスコープを明確化するためにもここで洗い出しを行います。
ブランディング・プロジェクトのゴールを策定する
以下の構文を埋めるようブランディング・プロジェクトのゴールを策定し、プロジェクトを定義づけします。インタビューとワークショップによって明らかになった課題を設定し、ポイントを明確にします。また、プロジェクトのスコープを明確にするため、短期・長期それぞれのブランディングプロジェクトのゴールを設定します。
『本ブランディングプロジェクトは、○○○を目的とする。
本プロジェクトの短期的ゴールは○○○であり、さらに長期的に○○○に繫がるよう活動していく。○○○までに社内プレゼンテーションを実施することを短期のスケジュール目標とする。
短期的に解決すべき課題は、○○○である。具体的に○○○を行うことでそれを解決する。
スケジュール通りに進めるために障壁になりそうなことは○○○だが、それには○○○によって対応する。』
ミッション/ビジョン/バリューの策定
「組織が担い続ける社会的使命」としてのミッション、「組織が目指すべき理想の未来」としてのビジョン、「組織の特徴・強み・リソース」としてのバリューを策定します。これまでのインタビュー・ワークショップを踏まえ私たちがクリエイティブをご提案します。
さらに、ブランドの現在のキーメッセージとなるコンセプトをつくります。コンセプトダイヤグラムという手法で、ユーザーのインサイト、競合との差別化、自社のベネフィットをストーリーに盛り込み、企業理念と整合した新しいコンセプトを生み出します。
最後に、ブランドコンセプトシートを作成します。ターゲット、インサイト、コンセプト、ベネフィットを盛り込んで1枚にまとめます。それをもとに、ブランドのステイトメントとなるキーメッセージを制作します。制作するブランディングツールの指針となるメッセージを開発します。
ロゴとタグラインの方向性を定める
ロゴ・タブラインの方向性を検討します。「存在起源型」「存在方針型」「存在声明型」「存在価値型」の4つの型式について、どの方向性が現在の事業=ブランドに最適かをディスカッションします。
これにより、漠然とデザインや言葉の好みでロゴやタグラインを定めるのではなく、方向性を定め戦略的にロゴとタグラインを策定することが可能になります。また、お客様企業の現在の事業フェーズについて共通認識を持つことができるようになります。
ロゴをデザインし、ブランディングデザインのガイドラインを開発する
ロゴが確定したら、ロゴマニュアル(規定書)をはじめとした、ブランディングデザインのガイドラインを策定します。ロゴに関連づけられるモーションロゴ、名刺、封筒、サイン、プレゼンテーション資料なども統一的にデザイン制作します。
ブランドのコンセプトやミッション/ビジョン/バリューを記したバイブルをつくる
ブランドブック(DNAブック)を制作します。ロゴの由来、ビジョン/ミッション/バリュー、行動指針、ブランドステイトメントなど、ブランドコンセプトを踏まえ、クリエイティブ提案します。
社内プレゼンテーション
コンセプトとデザインのプレゼンテーションを行う
ビジョン/ミッション/バリュー、ブランドステイトメント、新しいロゴなどを社内プレゼンテーションします。新しいブランドコンセプトで社内のモチベーションを高め一体感を醸成します。また、これまでの取り組みの経緯や新たに発見した課題なども共有し、社内の目線を合わせます。
浸透施策の立案と実行
ブランディングツールの制作と浸透施策ツアー開催
ブランディングツールを制作し社内外にブランドを浸透させていきます。また、社内のブランド理解と浸透をより深く促すため、ミーティングセッションツアーやワークショップなどを企画します。ブランディングチームだけでなく、様々な社内スタッフに参加して貰い、ブランドコンセプトを伝導していきます。
約半年のブランディングプロジェクトで完結
「価値探求」と「デザイン」のフェーズは約半年で終了します。ブランディングツール制作やブランド浸透施策についてはその後柔軟に設計を行います。ビジョン策定・ロゴデザインのプロジェクトでは、「価値探求」で探索した存在意義や存在価値についての議論が熱いうちに進めることが有効です。そのため、スピード感をもってプロジェクトを進行させることも重要で、最終的なアウトプット(ミッション/ビジョン/バリューとロゴデザイン)のために力強くプロジェクトをリードするデザイン会社の存在意義がここで問われます。抽象的な議論ばかりにはまり込んでしまうとプロジェクトがスタックしてしまうため、「価値探求」フェーズから「デザイン」フェーズへと思い切って飛躍する大胆さも、ビジョン策定系のプロジェクトでは必要になります。